はじまり

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季節は気候の穏やかな暖かい春。

アタシは住んでいる「陸地の階」を離れて、一階層下にある、海の広がる「浅瀬の階」にいた。



ルディ
「へぇ〜、ここが浅瀬の階か。初めて来た」



辺りを珍しそうに見渡していれば、聞き慣れた男の溜息が聞こえる。



ルース
「あまりキョロキョロしないでください。よそ者丸出しで恥ずかしい」



ルディ
「いや、アタシたちはよそ者だろうが!」



ルース
「あぁ、訂正します。ルディのそれは観光地に初めて来た田舎者臭い仕草だから、やめてください」



ルディ
「酷くないか!?」



ルース
「まぁ、そんなことはともかく。今回はせっかくの休暇なので、お互い適度に楽しみましょう。と言っても、ルディは僕の荷物持ちとして同行してるのですが」



ルディ
「あぁもう! 荷物持ちなんて仕事忘れてたのに! 思い出させるなよ!」





アタシはここに来るまでの経緯を思い出す。



いつものように、アタシはルースたち雨の神のいる屋敷にイタズラ…という名の悪事を働きにきた。

だが返り討ちにされたあげく、罰として、休暇を取っていたルースの荷物持ちとして旅行に同行させられたのだ!





ルース
「荷物持ちという名目で旅行ができるんですから、ルディはむしろ喜ぶべきだと思うのですけど?」



ルディ
「ルースは絶対アタシのことコキ使うだろ!」



ルース
「よく分かってるじゃないですか」





ルースはニコリとも笑わない。





ルース
「このまま宿まで行きましょう。荷物、重いでしょうけど、頑張ってください」





ホント、コイツは、血も涙もない!!

鬼畜めっっ!!

宿に荷物だけ置いて。

アタシたちは浅瀬の階のカラフルな街を歩く。





ルディ
「なぁ、ルース。これからどこ行くんだ?」



ルース
「知り合いと合流します」



ルディ
「へぇ〜。ルースみたいな鬼畜にも友達がいるんだな」



ルース
「友達じゃありません。知り合いです。彼に対して、友達なんて親しい言い方は、むしろ馴れ馴れしくて失礼です」



ルディ
「そうなのか…」



ルース
「それにしても、道ゆく人の多くが、白い花を持ってますね。何かイベントでもやってるんでしょうか」





ルースに言われて気付く。
確かに、道を歩く人たちの手には、白い花があった。これが日常だとは思えない。

なんだろう。

そう思った時だった。





花屋
「そこのカップルのお二人さん! 花流しのお花はいかが?」



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