C-a-b それじゃあ…ルディ、
ルディ
「交換しない」
リュシー
「え?」
ルディ
「今は、交換しない。あのさ、どうせだったら、夕方の花流しの時に交換しようよ」
リュシーは驚いた顔をした。
リュシー
「花流しって、アレは恋愛成就のためにやることだぞ?」
ルディ
「女兄弟成就、って意味でとか…どう?」
リュシー
「ぷっ。なんだそれ」
リュシーは楽しそうに笑った。
リュシー
「いいよ。女友達成就の意味も込めて、流そっか」
ルディ
「うん!」
リュシー
「じゃあ、恋花は後で買うとして…夕方まで何しよっか。まだ時間あるよ?」
ルディ
「あ、そっか。うーん、どうしよう」
考えるアタシに、リュシーは看板を指差して言った。
リュシー
「ちょっとそこで休憩でもする?」
リュシーが指差した看板にはHotelの文字。
ルディ
「え? ホテルで休憩?? ホテルは泊まるとこだろ?」
リュシー
「ん〜、ルディにはまだ早かったかぁ〜。まぁ冗談だからいいけど」
ルディ
「???」
その後、リュシーとは街を散策した。
夕方…
海岸には恋花を流す人たちでいっぱいだった。
リュシー
「さてと。じゃあ、女兄弟成就の儀式でもしようかね」
ルディ
「うん…」
リュシー
「ん? どうした? 浮かない顔じゃん」
ルディ
「いや…よく考えたら、リュシーとはもう会えないんだった。アタシ、帰らなきゃいけないし…」
リュシー
「……ルディ」
リュシーはアタシを優しく抱きしめた。
リュシー
「離れていたって、ルディはアタシの可愛い妹だよ」
ルディ
「リュシー…」
リュシー
「恋花、交換しよ」
リュシーと恋花を交換する。
赤く染まった恋花を、アタシたちは海に流した。
ルース
「あ! こんなとこにいた!」
聞き慣れた声に振り返ると、疲れ切った顔のルースが近寄ってくる。
ルース
「まったくもう…今日一日、街中探していたんですけど?」
ルディ
「あ、ごめん」
ルースはリュシーを睨む。
リュシーはアタシたちに背を向けて、街へと歩き出した。
リュシー
「お迎えが来たみたいだね。それじゃあ…ルディ、ばいばい」
ルディ
「リュシー!」
リュシーは立ち止まる。
ルディ
「また会おうね!」
リュシー
「また? またなんか無いよ」
ルディ
「!?」
リュシー
「また会えなくたって、アタシたちの絆は不滅さ」
リュシーは夕暮れの街へ消えていった。
ルース
「はあ。僕が苦労して貴女を探し回っている間に、あの女盗賊と仲良くしてたんですか? そんなだったら、探さずに、僕もゆっくりと観光でもしていればよかったでしょうかね……ん? ルディ?」
ルースの小言なんて耳に入らない。
またなんて無い。
アタシは、涙が止まらなかった。
ルース
「え? ルディ?? 泣いてるんですか?」
動揺するルースを置いて、アタシはリュシーを追いかけた。
日の暮れた街を走る。
だけどリュシーを見つけることはできなかった。
ルディ
「リュシー…リュシー!!」
泣きながら名前を叫ぶ。
だけど、リュシーは現れなかった。
リュシーを見つけることは、できなかった。
+++++
盗賊団のボス
「いいのか、リュシー」
リュシー
「いいんだよ。アタシの…盗賊の世界に関わらせたくないからね」
ルディを街の暗闇から見守る影は、そのまま夜に消えていった。
END【またなんか無いよ】