姉さんリュシー

【Cを選択】





アタシはリュシーに従った。





ルディ

「分かった! アンタに従うよ!! でもそれは、アタシだけにしてくれ!」



リュシー

「!」



ギルバート

「ルディちゃん!? 何を言って…」



ルディ

「ルースとギルバート…2人には手を出さないでくれ!!」





ルースは雨の神に仕えてる人間だし、ギルバートは海の神である魔法使い。

対して私はただの小悪魔。

2人が怪我をするのは大問題だけど、アタシが怪我をしても…残念だけど、なんの問題もない。



リュシーは少し考えて、ニヤリと笑ったような声で言った。





リュシー
「ふーん。自己犠牲ってやつ? じゃあお言葉に甘えて、アンタはアタシと一緒に来な!」



ルディ
「きゃっ!」





リュシーにナイフを突きつけられたまま、路地裏に連れ込まれる。

ルースが叫ぶ。





ルース
「ルディ!!」



リュシー
「まだ追ってくるなよー。大丈夫。金目のもん巻き上げたら、どっかに捨てといてやるよ。しばらくしたら、街中探すんだね」





アタシはリュシーに連れ去られた。





×××××





路地裏をしばらく歩かされて、海が見えなくなった所で、リュシーは穏やかに、優しく言った。





リュシー
「さてと。ここらでいいかな……もうアンタ、どっか行っていいよ」





さっきまでの怖い盗賊とは思えない口調に、アタシは驚く。





ルディ
「え? 人格変わった??」



リュシー
「変わったもんか。こんなか弱い女の子に恐喝するほど、アタシは落ちぶれてないよ。せいぜいギルバート辺りから金が巻き上げられればいいと思ってたくらいだから」



ルディ
「恋花は…」



リュシー
「とっておきなよ。思い出にしときな」



ルディ
「……」





なんだろう。

この人、そんなに悪い人じゃなさそう…?





リュシー
「じゃあね。アタシは消えるよ」



ルディ
「ま、待って!」



リュシー
「?」





思わずアタシはリュシーを引き止める。





リュシー
「なんか用?」



ルディ
「そ、その…アタシ…この街の地理感が無いから、これからどこに行ったらいいか分からない…」



リュシー
「あー」



ルディ
「ごめん…知らない土地を歩くのは…怖い…」



リュシー
「それもそうか。悪いことしたねぇ」





リュシーが言った直後だった。

アタシの腹から、盛大に空腹の音が鳴った。





ルディ
「……」



リュシー
「……」





お互いしばしの沈黙の後、リュシーが笑い出す。





ルディ
「わ! 笑うなよ!!」



リュシー
「笑うでしょ。間抜けでおっきい音〜」



ルディ
「やめろよぉ! 恥ずかしいから!」





ひとしきり笑ったリュシーは言った。





リュシー
「アンタ。お腹すいてんなら、アタシと飯でも食べに行かない?」



ルディ
「えっ!?」



リュシー
「ちょうどお昼でしょ? アタシも飯にしようと思ってたとこ。1人で食べるのもなんか味気ないし、一緒にどう?」



ルディ
「どうって…でも、ルースとギルバートはどうしよう…?」



リュシー
「男2人なんてほっときなよ。結果的にアンタが無事なら大丈夫でしょ?」





そうなのかな…?

でも、帰り道も分からないし、今からルースとギルバートに会いに行くのは難しい。





ルディ
「じゃあ…ご飯食べに行こうかな」



リュシー
「決まりだね。店はアタシが決めていい?」



ルディ
「うん、お願いします!」





歩き出そうとして、リュシーが言う。





リュシー
「そうだ、ちゃんと自己紹介してなかった。アタシはリュシー。アンタは?」



ルディ
「ルディ」



リュシー
「ルディね。よろしく」





アタシたちは街の大通りへと歩いていった。





×××××




リュシーはカジュアルなバーガーショップに連れて行ってくれた。

店頭のディスプレイにはハンバーガーの見本が並ぶ。





ルディ
「うわ〜! 美味しそう! 大きいし!」



リュシー
「食べきれそう?」



ルディ
「全然イケる!」



リュシー
「いいねぇ。じゃあ注文しよっか」





ハンバーガーを注文して、カウンター席で待つ。

目の前でパンと肉を焼いて、具材を乗せて、ポテトも揚げて…





リュシー
「ここは作る所も眺められて、見てて面白いんだよねぇ」



ルディ
「いい匂いしてきた〜!」





作る工程を見てると時間と空腹を忘れられる。

そうして、アタシたちの前に、ハンバーガーが出された。





ルディ
「いっただきます!」





リュシーは何も言わず、ハンバーガーを食べる。

一口食べると、ジューシーな肉とチーズとケチャップの味。





ルディ
「うま〜!」



リュシー
「だろ〜?」





ニヤニヤ笑うリュシー。





リュシー
「飯食ったらさ、その後どうする?」



ルディ
「え?」



リュシー
「まだ、アタシと一緒にいる?」



ルディ
「いてもいいの?」



リュシー
「構わないよ。今日はもう盗賊稼業は切り上げて、久々に遊んじゃおうかなって思えてきたから」



ルディ
「じゃあ、一緒にいたい!」





自然と、アタシの口から「一緒にいたい」という言葉が出た。

ルースとギルバートには悪いけど、リュシーは悪い人じゃなさそうなので。

リュシーはニヤニヤと笑う。





リュシー
「一緒にいたい、ね。こんな可愛い女の子に言われるのも、悪くないわ〜」



ルディ
「リュシーって、頼れるお姉さんみたいだな!」



リュシー
「まぁ、アタシの方が年上だからねぇ。ルディはちょっと抜けてる妹って所かな」



ルディ
「抜けてるのかよー!」



リュシー
「まぁ、そこが可愛げってやつ?」





笑うリュシー。

アタシは少し気になったので、切り出した。





ルディ
「なぁ、なんでリュシーは、盗賊なんかやってるんだ?」




リュシー
「いろいろあったのよ。いろいろ」




どうやら、あまり言いたくないらしい。

まぁ、真っ当な理由で盗賊なんてやるわけないか。





リュシー
「ルディは、家族とは仲いい?」



ルディ
「え? いや…そんな言うほど仲良くないというか…ほっとかれてるというか…そもそも家族と言っていいのやら…でも、兄弟姉妹みたいなやつはいっぱいいて、そいつらとは多分仲は良いんじゃないかなぁ?」





自分で言っていて、なんて曖昧な情報なんだと呆れそうになる。





リュシー
「そう。家族仲は大事だよ」





そう言って、リュシーはハンバーガーを食べる。

どうやらリュシーは、家族と何かあるようだ。





×××××





食事を終えて。

アタシたちは店を出て大通りを歩く。





リュシー
「さっきさ、なんで盗賊やってるのか、聞いたでしょ?」



ルディ
「あ、うん。でも、言いたくないなら…」



リュシー
「ううん。ちょっと話させて」





リュシーは言う。






リュシー
「アタシね、家族仲が良ければ、多分今頃、盗賊やってなかったと思う」



ルディ
「え?」



リュシー
「アタシ、14歳の時に、母親の再婚相手を寝取ったのよ」



ルディ
「!? 14歳って…アタシくらいの時に!?」



リュシー
「それで母親と大喧嘩。母親ったら、子供に手を出した再婚相手じゃなくて、アタシに怒ったんだよ? 再婚相手を寝取った女としてね」



ルディ
「そんな…」



リュシー
「それで、アタシは14歳にして家を追い出された。そこから色々あって、今は盗賊やってる」



ルディ
「そうだったんだ…」



リュシー
「でも、今が不幸なんて思っちゃいないよ。むしろ、盗賊やってる今の方が自由で最高。盗賊団のボスも仲間も、良いやつらだし」





リュシーは笑う。

屈託なく。

盗賊なんて、褒められた職業じゃないけど。

リュシーにとっては、救いだったのかな。

アタシはリュシーに言った。





C-a、「アタシ、リュシーの妹になりたい」

C-b、「アタシ、リュシーの家族になりたい」
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