応戦!  

【Bを選択】



アタシはギルバートに助けを求めた。



ルディ
「助けて! ギルバート!!」







途端、波打ち際がざわついた。

海水が龍のように立ち昇ったと思えば、アタシを拘束するリュシーに襲いかかる。





リュシー
「きゃあっ!」



ルディ
「わあっ!」





リュシーは海水と共に吹き飛ばされ、アタシはその拍子に拘束から逃れた。

解放された私はギルバートに引き寄せられ、肩を抱かれる。





ギルバート
「海辺で恐喝を働いたのが運の尽きだな。今は人間の姿とはいえ、海の神の能力は使えるのだよ」



リュシー
「くっ…!」





リュシーは悔しそうに舌打ちをして、その場から走り去っていった。



辺りに再び平穏が戻る。



ギルバートはアタシの肩を抱いたまま微笑みかけた。





ギルバート
「危なかったな、ルディちゃん」




ルディ
「え、あ…うん…助けてくれて、ありがとう、ございます…」





ギルバートはアタシから離れると、申し訳なさそうに言った。





ギルバート
「しかし、ルディちゃん。すまない」



ルディ
「え? なんでおじさんが謝るんだよ?」



ギルバート
「助けるためとはいえ、ルディちゃんの服を濡らしてしまった」





言われて気づく。

アタシの服は海水で濡れていた。

ちょっと肌寒い。





ギルバート
「ひとまず、私の上着を羽織っててくれ」



ルディ
「!」





ギルバートはさっと上着を脱いで、私にかけてくれた。

人肌の温かさと、ふわりと男の人の香りがした。





ルディ
「あ、ありがとう…」





こんなに優しくしてもらえたのって、初めてかもしれない。

素直に嬉しい。





ルース
「無事に盗賊も追い払えてよかった…と言いたい所ですが、あの人、まだ街をうろついているんですよね…」



ギルバート
「そうなるな。見過ごせることではない」



ルース
「ギルバート様。僕が警察に通報しに行ってきます」



ギルバート
「いいのかい?」



ルース
「せっかくの今日1日がおじゃんになってしまいますが…明日以降は安心して観光がしたいですからね。ルディも、ギルバート様に上着を返して、僕と行きますよ」



ルディ
「えぇ!? アタシびしょ濡れなんだけど!?」



ルース
「ルディがギルバート様と一緒にいたら迷惑でしょう。ほら、僕と行きますよ」





そう言った時だった。





ギルバート
「じゃあ、ルース君。今日1日、ルディちゃんを私に貸してくれないか?」



ルース
「え?」





えぇ!?

驚くアタシを横に、ギルバートが言う。





ギルバート
「ルディちゃんに粗相をしたのは私だ。彼女にはお礼がしたい。ルース君が警察に通報しに行っている間、私はルディちゃんと一緒にいるよ」



ルース
「そうですか。では、そうしましょう。ルディ、くれぐれもギルバート様に失礼がないように」





ルースはアタシに釘を刺して、その場から去っていった。



海辺にて、アタシとギルバートの2人きり…





ギルバート
「さて、ルディちゃん」



ルディ
「え、あ、その…」



ギルバート
「これから私とデート、ということになるが、いいかな?」



ルディ
「でっっ!!」





デート!!?

まぁ2人で一緒に行動するっていうのは、デートになるだろうけど…!!

ギルバートはクスクスと笑う。





ギルバート
「そんな驚いた顔をしないでくれ。言い方がセンシティブだったかな?」



ルディ
「いきなりデートなんて言われたら、誰だって驚くだろ!」



ギルバート
「そうだな。じゃあ今日はルディちゃんにたっぷりお礼をしてあげよう」



ルディ
「う、うん……へっくしゅ!」





クシャミが出た。

ヤバイ。

春とはいえ、濡れた服に春風は寒いかも。





ギルバート
「風邪を引く前に…まずは、服だな」



ルディ
「へ?」








街の服屋にて。

着替えたアタシは更衣室のカーテンを開ける。

ギルバートは嬉しそうに言った。





ギルバート
「うん。よく似合ってる」



ルディ
「な、なぁ、これ…ちょっと可愛すぎないか?」





ギルバートが選んでくれた服は、丈こそ膝下だが、明るい色のフワフワしたワンピースだった。

普段アタシが着ないような可愛い服…

ちょっと、恥ずかしい。





ギルバート
「ルディちゃんは可愛いから、よく似合ってるよ」



ルディ
「似合ってる…かもしれないけど…アタシの柄じゃないというか…」



ギルバート
「柄じゃない、か。じゃあこういう解釈はどうだろう? これはルディちゃんの新しい一面だよ」



ルディ
「新しい一面?」



ギルバート
「ルディちゃんは、自分が思っている以上に、可愛いんだよ。こういう服が似合うくらいね」



ルディ
「そ、そう…か?」





可愛い可愛いって、言い過ぎじゃないか…?

でも、悪い気はしない。

むしろ嬉しい。





ギルバート
「決まりだな。その服、買おう」





そう言って、ギルバートは店員を呼んで、会計を済ませる。





ルディ
「あ、ありがとう…ちなみに、いくらだったんだ?」



ギルバート
「そんな野暮なことは聞かなくていいんだよ」





ギルバートは微笑んでそう言った。

服屋から出る。

なんか、服装が違うだけで、おしとやかにしなきゃいけない気分になる。

そう思った途端、アタシの腹から音が鳴った。





ルディ
「あ…」



ギルバート
「ん? あぁ、そういえば、もうお昼時か。どこかで食事にしよう」



ルディ
「この格好で腹の虫が鳴るとか、恥ずかしい…」



ギルバート
「そんなルディちゃんも可愛いよ」





そうして、ギルバートは少し考える。





ギルバート
「ルディちゃん、何が食べたい?」



ルディ
「え? えーっと…そうだなぁ。美味しいもの!」





ギルバートは苦笑した。





ギルバート
「美味しいもの、か。こういうお店に行きたいとかは、あるかな?」



ルディ
「うーん。おじさんの選んでくれたとこなら、どこでもいいよ」



ギルバート
「そうか…じゃあ、ルディちゃんに合ったお店にしよう」





そう言って、街の大通りを歩いていく。

ギルバートはテラスの開放的なオシャレなカフェに連れて行ってくれた。





ルディ
「わ〜。オシャレ〜…」



ギルバート
「こういう所には普段行くかい?」



ルディ
「いや、全然」



ギルバート
「ならよかった。好きなものを頼んでくれ」





レジで注文をしようとする…が。

なんというか…

メニューまでオシャレで…見にくい、というか分かりづらい。

特にドリンクの所…サイズ表記が見慣れない記号で書かれている。





ルディ
「えーっと…えーっと…」





困っていると、だんだんアタシの後ろに列ができていく。やばい。

ギルバートが言った。





ギルバート
「ルディちゃん。食べられないものはあるかい?」



ルディ
「いや、無い…」



ギルバート
「じゃあ私が勝手に注文していいかい?」



ルディ
「頼む…」





ギルバートは店員に何か注文した。

番号札を持たされ、アタシたちはテラス席に座った。





ルディ
「うぅ…オシャレ過ぎて付いていけない…」



ギルバート
「あはは。こういうのは慣れだからね」





そうこう言っていると、すぐに食事が出てきた。

キッシュのランチプレートが2つに温かい紅茶。





ルディ
「わぁ! 盛り付け綺麗! 美味しそう!」



ギルバート
「どうぞ、お食べください。お嬢様」



ルディ
「お嬢様って……まぁいいや! いただきます!」





ギルバートも、いただきますと言って、ナイフとフォークで上品に食べる。

アタシはそれを見て、不慣れながらも、テーブルマナーを意識して食べる。





ルディ
「美味しい!」



ギルバート
「この店は味にハズレがないからね。それに、服が汚れたりしないよう、デートに配慮した料理にも定評がある」



ルディ
「デート…」





ギルバートから、またデートという単語が出る。





ルディ
「な、なぁ、おじさんさぁ…さっきからデートって言い過ぎじゃないか?」



ギルバート
「そうかな? まだ2回しか言ってないぞ?」



ルディ
「数えてるんだ…」



ギルバート
「ルディちゃんこそ、私とデートする、ということを意識しすぎなんじゃないかな?」



ルディ
「そ、それは…!!」





頬が熱い。





ギルバート
「いいんだよ。私はルディちゃんと一緒にいられて、とても嬉しい」





ギルバートは微笑んだ。





ギルバート
「しかし…もう私のことは名前で呼んでくれないのかな?」



ルディ
「え?」



ギルバート
「私に助けを求めた時は、名前で呼んでくれたじゃないか」



ルディ
「あ…」





思い出して、気まずくなる。





ルディ
「あれは…その…ごめん。とっさに呼び捨てで呼んじゃって…」



ギルバート
「いいんだよ。でもどうせだったら、そのまま私のことは「ギルバート」と呼んでくれてもよかったのに」



ルディ
「え? そんなのいいの?」





ギルバートはアタシを真っ直ぐ見て言った。





ギルバート
「そうすれば私も、ルディちゃんのことを、「ルディ」って呼べるだろう?」



ルディ
「!」



ギルバートに呼び捨てで名前を呼ばれた瞬間。

何故だか心の奥がくすぐったくなった。

なんでだ!?

距離が近いように感じるからか!?

私はギルバートから目を逸らしながら言う。







B-a、…まだ、おじさんって呼んでおく

B-b、今からでも、ギルバートって呼んでもいいか?
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