A-b 「恋愛だけじゃないよな」

【A-bを選択】





ルディ
「恋愛だけが男女の関係じゃないよな」



ルース
「おや。ルディにしては、良いことを言うじゃないですか」



ルディ
「アタシにしては、ってなんだよー!」





ルースはアタシの言葉を黙殺する。





ルース
「しかし本当に…男女の仲は恋愛だけのものではない。友情という仲だってアリですし、真性不可逆相対性関係という仲だってアリなんですから」



ルディ
「………ん???」





アタシはルースの最後に言った言葉が聞き取れなかった。





ルディ
「え? 何? シンセイ…ん???」



ルース
「真性不可逆相対性関係。ですよ」



ルディ
「……なにそれ?」





聞いたことのない単語だ。

ルースは呆れた顔で言う。





ルース
「知らないんですか? あの有名な物理破壊学者が提唱した、新しい人間関係のことですよ」


ルディ
「物理…破壊??」



ルース
「物理破壊学者も知らないんですか? 世間知らず過ぎですよ」

20230602-174544.jpg

ルディ
「えっと…うん??」





物理学者は知ってるけど、物理破壊学者なんて、初めて聞いたぞ。

ルースは説明する。





ルース
「いいですか。真性不可逆相対性関係というのは、アルシデの外側を暗黒ウォーターという黒い液状の空気が満たされていると仮定して、その中にある、我々が生きているアルシデという世界との関係は、味噌汁の味噌が浮いたり沈んだりするように未来永劫変わることないという、画期的な説です」



ルディ
「……んん?????」





全然分からない。
ルースは大袈裟に溜息をついて言う。





ルース
「分かりやすく説明すると、味噌汁ってあるじゃないですか。あれはお湯と味噌と豆腐とワカメの4つがあるでしょう? まぁ他にも、豆腐とワカメの代わりにドリアンとパプリカというパターンもありますが。まぁとにかく、お湯が暗黒ウォーター、味噌がアルシデと仮定すると、その周囲をワカメと豆腐が漂っていることになりますが、この時のワカメと豆腐はお湯と味噌には干渉してこれない。お湯と味噌はワカメと豆腐が無くても、味噌汁として成立するのです」



ルディ
「はあ…」



ルース
「そして、忘れがちなのですが、ここでダシが登場します。ダシはカツオでも昆布でもいいのですが、このダシがなければ、アルシデと暗黒ウォーターは良好な関係を築けないのです。そう、真性の味噌汁は完成しないのです。このままでは味噌とお湯が喧嘩をしてしまう。その潤滑油として、ダシが必要なのです」



ルディ
「………」



ルース
「ダシを得たアルシデは、味噌との結合をより強固なものとし、決して崩壊しない完全な関係となる。これが、真性不可逆相対性関係です。分かりましたか?」



ルディ
「………」





頭が溶けそうだった。

ルースは一体、何を言っているんだ?

ルースは、どうしようもないものを見るかのような目でアタシを見る。





ルース
「ルディには少々、難しい話だったようですね」



ルディ
「いや、アタシじゃなくても、この話が理解できるヤツいるのか?」





言った直後だった。



アタシたちの周りに、いや、街全体に、影が落ちた。

空に暗雲のようなものが立ち込める。





ルディ
「え!? なに!? 雨雲!? なわけないよな!?」



ルース
「これは…!! 暗黒ウォーター!!!」



ルディ
「……は?」





ルースは険しい顔をして言う。





ルース
「なるほど、学説は本当だったんですね…! 真性不可逆相対性関係が、こんな形で証明されてしまうなんて…!!」



ルディ
「は? は??」



ルース
「分からないんですか、ルディ!」



ルディ
「さっきから1ミリも分からねぇよ」





言った直後だった。

暗雲から、何かがアタシたちに向かって落ちてきた。





ルース
「危ない!!」



ルディ
「うわあ!」





ルースに引き寄せられ、間一髪避ける。

見ればそこには…

ワカメと豆腐が落ちていた。





ルース
「くっ、当たったら死ぬ所だった…!!!」



ルディ
「え? ワカメと豆腐じゃん」



ルース
「これは非真性不可逆ドップラー衛星ですよ! さっき言ったでしょう!」



ルディ
「言ってねぇよ」





ルースは話を聞かない。



ルース
「ここにいては危ない…仕方ありません。ルディ! 暗黒ウォーターをアルシデの外に出すために、今こそ恋花の真の力を使う時です!」





ルディ
「え? 恋花??」



ルース
「忘れたんですか!? 恋花は暗黒ウォーターを制御するための鍵だと言うことを!! さっき言ったでしょう!!」



ルディ
「だから、言ってねぇつってんだろ」





ルースは懐から恋花を取り出す。





ルース
「このままでは世界が終わる…!! さあ、ルディも! 死にたくなければ恋花を持って!」





徹頭徹尾、意味が分からないが、とりあえず、アタシは恋花を取り出した。





ルース
「今から言う呪文を、僕と一緒に唱えてください! ンセアサヘヘエ・スデレズハハトウルノコ。いいですね?」



ルディ
「んせ…ええ????」



ルース
「いきますよ! 失敗は許されません!」



ルディ
「ええええ!???」



ルース
「せーのっ!」





アタシは呪文を唱えた。





A-b-c、「ンセアサヘヘエ・スデレズハハトウルノコ!」

A-b-d、「ンセアサヘヘエ・スデレズホハトウルノコ!」
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